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法務局で遺言書を保管できるようになります。

 みなさんこんにちは。福岡市早良区高取の司法書士江上慎也です。

 あちこちで新しい元号「令和」の話題でもちきりですが、みなさんはどんな印象を持たれましたか?私は最初少し意外な印象を受けましたが、だんだんといい年号だなと思うようになりました。新元号に託された想いのような新しい素敵な時代になるといいですね。

 さて前回からの続きになりますが、平成30年の民法改正に伴い「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が創設され、令和2年7月(早速使ってみました)までに自筆証書遺言を法務局で保管する制度がスタートします。今回はそのことについてお話をしたいと思います。

 自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、作成した後は自らの責任でどこかに保管しなければなりません。そのため相続人が遺言の保管場所を知らなかったり、紛失、火事や災害などによる消失などのリスクがどうしても生じます(公証役場で作成する公正証書遺言はその原本が公証役場で保管されるのでこのようなリスクは低くなります)。そこでこうしたリスクを防ぐために自筆証書遺言を法務局(=「遺言書保管所」。以後、「遺言書保管所」といいます)で保管できる制度が新設されました。

 具体的な手続きとしては、法務省令の定める様式に従った自筆証書遺言を作成後、封をせずに①遺言者の住所を管轄する遺言書保管所 ②遺言者の本籍を管轄する遺言書保管所 ③遺言者が所有する不動産を管轄する遺言書保管所 のいずれかに保管の申請をします(ただしすでに自筆証書遺言をどこかの遺言書保管所に保管申請をしている場合は2回目以降はその遺言書保管所に申請する必要があります)。また、別途申請書および戸籍などの添付書類を提出し、手数料を納める必要があります。なお保管の申請は必ず遺言者本人が直接管轄する遺言書保管所に出向いて申請する必要があります(代理人による申請や郵送による申請は認められません)。

 申請された自筆証書遺言は遺言書保管官が自筆証書遺言の方式及び法務省令に定める様式にのっとったものであるかを確認し、問題がなければ遺言書原本を保管したうえで遺言書の画像データを遺言書保管ファイルに記録します。このように遺言書を保管するとその後改ざん等がなされる可能性が無くなるため、従来の自筆証書遺言で必要だった遺言の検認手続(家庭裁判所に相続人全員が集合し、遺言に改ざんなどが無いかを確認する面倒くさい手続きです)が不要になりました。

 遺言者が死亡し相続が開始した後は、相続人等は遺言書保管所に対して「遺言書保管事実証明書」を請求することができます。これは先ほど述べました遺言書の画像データの全部が記録されている証明書で、この証明書をもとに相続手続きを進めていくことができます。また、相続開始後、相続人等は遺言書が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した「遺言書保管事実証明書」の交付を請求することができます。これによって従来より遺言書の存在の有無の確認が簡単になるものと思われます。

 以上、自筆証書遺言の保管制度について簡単にお話をしてきました。実際に運用されるのはまだ少し先のことですが、運用が開始されれば遺言についてのハードルが従来よりも下がるのではないかと思います。上手に活用して相続が「争族」とならないようにしていきたいですね。

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